今回も前回から引き続き、昨冬訪れたハワイ島でみた古代ハワイアンカヌーのストーリーをお届けしたいと思います。
皆さんがカヌーと聞いて思い浮かべるものはどんな素材で、どんな形をしているでしょうか?実はカヌーという言葉は定義がかなり曖昧で、オールやパドルなどを使って水をかいて進む舟という解釈が一般的なようです。
では、「古代ハワイアンカヌー」と聞いたら、どんなイメージが頭に浮かびますか?
前回もお伝えしましたが、古代ハワイアンカヌーとは、世界でサーフィンが始まるよりもずっと前からその歴史を持つ、一本の大木をくり抜いてカヌーを建造するという神秘的なカヌーです。そう、一本の大木から。そんな尊い文化を継承すべく国内外問わず奮闘されているNPO法人日本ハワイアンカヌー協会の中富浩さんにご協力いただき、現在ハワイ全域で唯一になってしまった古代ハワイアンカヌーを建造できる匠、アンクル・レイの近くで数日を過ごすことができました。
サーファーとして、海に精通する者を目指す者として、僕が感じたことを素直に文字に落としてみようと思います。
ALOHA
ハワイ=ALOHA
このイメージは日本人なら誰もが想い描くところだと思います。このALOHAというのも僕が語るには深すぎる言葉なのですが、僕なりの解釈は「他に対して謙虚に、礼儀や思いやりを持って接する」ことかと思っています。
サーファーにとっての聖地であるオアフ島・ノースショア。この地を毎冬訪れる両親に連れられ、物心つく前からこの地に足を運んでいた僕は本当に恵まれていました。僕にとってのハワイは、ずっとオアフ島のノースショアでした。しかし、近年マウイ島やハワイ島を訪れる機会に恵まれ、自分の中のハワイがどんどん広くなっています。
なぜALOHAの話をしたのかというと、アンクルをはじめ、僕が出会った古代ハワイアンカヌーの歴史を継承するメンバーたちのALOHAの純粋さに驚いたから。日本で初めて会った時も、この度ハワイ島を訪れた際も、まるで本当の家族のように受け入れてくれて、ご飯も経験も文化も愛も惜しみなくシェアしてくれました。僕の経験では、初対面やまだお互いを深く知らない状況で、ここまで愛を感じる接し方をしてくれたのは彼らが初めてだったのです。大変重要な文化である古代ハワイアンカヌーの歴史を紡ぐ彼らだからでしょうか、魂のレベルが高いと強く感じました。
僕が古代ハワイアンカヌーに対して強い魅力を感じる理由の一つに、彼らのALOHAがあるのです。文化だけでなく、彼らの人間性に惹かれ、導かれ、僕と古代ハワイアンカヌーの関係はゆっくりと、大きな波動でスタートしました。
ハワイアンカヌーはシーズンになると毎週のように島のどこかでレースイベントが行われていて、競技人口も多いそう。現にシーズンオフではあったものの、カヌーの置かれているというビーチの艇庫を見せてもらった時には10や20ではない、そのカヌーの多さに大変驚きました。
また、ハワイアンカヌーは一人で漕ぐものではなく、4人であったり、6人であったり、みんなで息と力を合わせて漕ぐものだそう。どんなに屈強な人を集めても、息のあったおじいちゃんたちのチームに歯が立たないというほど、団体性の強いハワイアンカヌー。この特性からカヌーに触れる子供たちは相手を想いやる心、息を合わせる大切さを学ぶそうです。教育の一部としても取り入れられているハワイアンカヌー。
そして、大多数のものはFRPやポリエチレンが素材に使われていますが、古代ハワイアンカヌーは一本の大木から一艇を作り出します。森林伐採などによって大きな舟を作り出せる大木はかなり減ってしまったようですが、その技術と歴史は今も深く、静かに息づいているのです。
協力 : NPO法人日本ハワイアンカヌー協会 (JHCA)