INTERVIEW-Vol.26 石川拳大

新しくサーフライダーファウンデーション・ジャパンの事務局長に就任した石川拳大。サーファーとして初となる企業アスリートのキャリアを生かして、今後、サーフライダーファウンデーションの運営に尽力していく。20代という新しい世代の発想とアイデアが、組織に新風を巻き起こすことを期待されている。

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石川拳大 / 写真 横山泰介
1994年生まれ、茅ヶ崎市在住。4歳からサーフィンを始めて、中学生で世界大会に参戦。高校時代はオーストラリア、ゴールドコーストに4年間留学。帰国後、神奈川大学に進学をし、学連支部から2年連続全国優勝を飾る。東京五輪開催決定後、2017年~2019年日本代表強化指定選手に選出。現在は日本情報通信 (NI+C) の企業アスリートとして働きながら国内外のコンテストに参戦している。

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事務局長は組織の顔であると同時に、活動に関わる様々な申請手続きなど事務処理もこなしSFJを支えるバックグラウンドの仕事も多い。会社員としての経験がここでも生きる

SURFRIDER FOUNDATION JAPAN (以下SFJ ) :石川さんは、普段はIT系の会社で働きながら、会社からサポートを受けてコンペティターとしても活躍している企業アスリートです。日本のサーフィン界では初めてのキャリアですが、どのようにしてなったのでしょうか。

大学生になって進路を考えるにあたり、自分なりにサーフィンを楽しんで向き合う将来にしたいと漠然と思っていました。4歳から20年以上もサーフィンをしていると、プロサーファーとして活動するのが一般的でしょうが、プロサーファーになることは幼少のころから両親にずっと反対されていました。実際、国内でも世界でもプロとして暮らしいくのは難しいので、「現実を見て仕事を選びなさい」ということだったのでしょう。大学の先生に日本オリンピック委員会で企業と現役トップアスリートをマッチングする「アスナビ」の関係者の方がいらっしゃったので、相談しました。他のスポーツ種目では、生活が安定しつつスポーツを続けることができる企業アスリートが当たり前ということを知りました。サーフィン界にもこのシステムが必要なのでは、と強く思いました。当時はプロになる気もサーフィンを仕事にしようとも思っていなかったのですが、それができるのは自分しかいないと思い、次世代のサーファーたちの新たなキャリアモデルになるべく企業アスリートとして活動をする決断をしました。

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インドネシアのリーフポイントでディープなチューブをメイクする石川。企業アスリートとして世界のトップを目指して奮戦している

SFJ :4年間、企業アスリートとして活動してきましたが、感想は。

世界のプロサーファー達と同等に会社の経費で大会を回っています。ほぼ、半年ぐらいは海外の生活です。日本の資格はありませんが、世界基準では実質プロと同じなので、“プロサーファー”というものを体験して勉強になりましたね。仕事と両立することによって、サーフィンのパフォーマンスもすごく伸びています。というのは社会人としてプロフェッショナルを目指していると、社会で培ってきているものをサーフィンにも生かしていくことができます。「一つだけ」だと、それ以上に視野を広げずらいと思います。例えば、ケリー・スレーターもサーフィンだけしているわけではありません。いろいろな活動を器用にこなしながら、今なお現役選手で何度も世界チャンピオンになっています。そういった幅広い視点がすごく大事なのかなと思っています。

SFJ : 今後、企業アスリートを続けながら、サーフライダーファウンデーション・ジャパン(以下SFJ)の事務局長としても活動していきます。就任した経緯は。

大学時代に『OCEANTREE』というサーフィンと環境問題をテーマにした映画を卒業制作しました。その時に、SFJの代表理事に相談をしたのがきっかけで、ずっと活動のお手伝いをさせてもらっています。それが縁で、今回、事務局長のお話をいただきました。海の環境に対する活動やコミュニティはいろいろとありますが、それはただの手段で目標としているゴールは皆一緒だと思います。そのような中で、サーフライダー・ファウンデーションは大きなパワーを持っているので、僕も貢献していきたいです。

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「海の寺子屋」はワークショップやイベントを開催して啓蒙活動を行うコミュニティ。コロナ禍の現在、代替として動画コンテンツのデジタル配信に石川主導で取り組んでいる

SFJ : 事務局長として、どんな活動をしていきたいと考えていますか。

次世代に対しての教育に力を入れていきたいですね。教育が変わらないと何も変わらないと思っていますので。今、直近で社会に出ていく大学生に向けて、新しいコミュニティを作っているところです。サステナブルに興味があったりサーフィンが好きだったり、そういう学生達の横のつながりですね。彼らがさらに子供達にワークショップを開催したり、サーフィンを体験させたりして、学校では教えてくれないことを伝えられれば。それが未来につながっていけばと考えています。その場となるのが、SFJが運営する「海の寺子屋」です。とても期待しています。

SFJ :IT会社でのキャリアを生かしたプロジェクトも進行中だと。

はい。「海の寺子屋」でワークショップやイベントを開催したいのですが、目下のコロナ禍では中々難しい。それでデジタル配信するためのアプリ開発をしています。動画も利用してSNSで多くの人に「海の寺子屋」の活動を知ってもらえれば。いろんなワークショップの動画コンテンツを配信して見てもらうことで、それぞれの時間、それぞれの場所で、自発的に環境活動ができる環境を作るお手伝いをします。アフターコロナになりある程度社会も落ち着いたら、実際に「海の寺子屋」で積極的にイベントも開催したいですね。目と目を見てコミュニティが広がることはすごく大事ですから。デジタルとアナログを両立していきたいですね。

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世界の優れたサーフポイントの環境を保護し持続させる「サーフィン保護区」の要望書を鎌倉市長に手渡した石川。行政や企業とのリンクが大切と考えている

SFJ :将来的に、SFJはどんなコミュニティを目指していきますか。

明るい未来に向かっていくコミュニティです。「0か100」で考えていたら、そういう団体にはならないと思います。一人一人の多様性を生かして「0から100」のバランスをしっかりと考えられるコミュニティが大事だと考えています。行政や企業とリンクしていき、最終的にサーファーだけではなくみんなが、自然にやさしいものを使い消費しながら生活ができる社会ができればベストです。それを実現する上で、行政と企業が動かなければ何も変わりません。社会をスムーズに循環させるハブになるような役割が、SFJであると考えています。

SFJ :どうも、ありがとうございました。今後の活躍を期待しています。
ます。

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サラリーマン、コンペティター、事務局長、4人家族の父親とマルチに活動する石川。多忙な日々だが、それぞれがいい影響を与え合っていると口にする

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