毎月第3土曜日は「リバー&リバーサイドクリーン」。
横浜市中心部を流れる大岡川沿いに拠点を置く、横浜SUP倶楽部の定例行事だ。
当倶楽部は、京急日ノ出町駅近くから、北はみなとみらい、南は磯子、石川町といった、まさに横浜のど真ん中を流れる川と海をSUPゲレンデに活動して9年になる。
「落ちたくない」とよく言われてしまう都市河川とそれに続く都会の海だが、実際のところ水質は悪くない。ただ、巨大な人口を抱える東京湾ということもあり、栄養豊富すぎるがゆえの赤潮の頻発、そして川面に浮かぶゴミの多さで、とにかくビジュアルで敬遠されがちだ。
2013年にここでSUPを始めたきっかけは、「とにかく毎日漕いでいたい」という気持ち。仕事や居住地の兼ね合いから、この交通至便な場所は「朝漕いでから出勤」というライフスタイルを確立するのにぴったりだった。
しかし毎朝漕ぐにあたって邪魔になったのが、水面に浮かぶゴミ。ナイロン袋のフィンヒットはものすごい衝撃で、身体が前に投げ出される。ペットボトルが引っ掛かれば、一気にスローダウン。限られた時間をめいっぱい使いたい私にはもどかしかった。それに、やはりシンプルに気になる。ゴミだらけの水面より、綺麗なところで漕ぎたいのは当然の気持ちだろう。
そんな動機で、SUPで出るついでに水面のゴミを拾おうと思い立った。
しかし、またもや問題発生。
陸上のゴミ拾い活動は、横浜市が無償で回収をしてくれるのだが「河川上のゴミは市の管轄外」ということで、同じ処分方法が使えないことが判明したのだ。
処分方法がなければ、ゴミを拾う活動もできない。横浜市に相談すると「家庭ゴミの常識的な範囲内の量で、きっちり分別して出すか、業者に依頼して有償で処分して欲しい」との回答を得たため、ゴミ収集日をチェックして日々拾い分けたり、数ヶ月に一度イベント形式で大規模ゴミ拾いを実施、業者に依頼して有償で処分したりしていた。
この処分方法の問題は、2015年10月に横浜市会の伊波議員の働きかけによって解決され、今では陸上の清掃活動と同様に回収して頂けるようになっている。SUPゴミ拾い開始から2年強の期間を要したけれど、なんとか処分方法を行政との間で確立したいと模索する中で、活動に賛同してゴミの処分費用を協賛してくださる企業様の出現や、「ありがとう!」の声かけ、ローカル誌に掲載して協働を呼びかけて下さる地元住民の皆さんの存在には大いに励まされた。同時に「これは水上で遊んでいる私たちだけではなく、川沿いに住む人たちにとっても切実な問題なんだな」と実感するようにもなった。
処分方法が確立してからは、以前よりも大規模にリバークリーンを実施できるようになった。目の前に浮かぶゴミをひたすら拾いながら、ヒラヒラと地上から落ちてくるナイロン袋を見て、「やっぱり陸上のゴミも拾って、最終的には自分達の生活も変えないと」と感じていたことから、SUPパドラーだけでなく、一般の参加者も募って、陸上のゴミ拾いも同時に実施することにした。こうして「リバー&リバーサイドクリーン」は誕生した。
横浜SUP倶楽部発足当初は2〜3人で行っていたこのリバークリーンだが、倶楽部メンバーの増加に応じて少しずつ参加者が増えていった。数年前からマイクロプラスチック問題が広く一般にも認知され始めたことや、SDGsの流れもあり、今では個人、企業、学校などから毎回数十人からの参加者が集まり、陸上と水上で和気藹々とゴミを拾っている。「リバークリーンをやりたいから、SUPを始めたい」という人も多く、今後どう広がっていくのか楽しみでもある。
関わる人の圧倒的な増加とともに、拾うゴミは少しずつ減ってきたようにも思えるが、成果を感じるには程遠い。ナイロン袋は有料化以来少し減ったけれど、マスクが増えた。ゴミは世相を映しながら、今のところ劇的に減る様子はないのが実情だ。
横浜中心部であるこの場所は、ビーチ以上に「人の生活」がとても近い。大型、あるいは有料で処分に手間がかかるゴミの不法投棄は後を絶たない。これまでで一人暮らしが始められるくらいの家具家電を拾ったと思うが、そんなものが川に投げ込まれているのだ。他のゴミもキッチンに直結したかの様態で、非常に生々しい。だから一層強く思う。「自らの生活スタイルを変えなければ、ゴミの問題は解決しない」と。安易にプラスチック製品を使わない、ゴミは持ち帰るなど、簡単に取り組めることはたくさんある。
ビーチクリーンにも時折参加するが、マイクロプラスチックを拾う作業には本当に気が遠くなる。大岡川で拾うゴミは、まだマイクロ化していないものがほとんど、捨てたてホヤホヤ。ここで止めれば、海に出る前に、街で止められる。街に出る前に、自らのライフスタイルを変えることで止める。こうした連鎖で、より良い環境を将来に残していきたいと願っている。
毎月第3土曜日、ぜひ大岡川でご一緒に!