Global Wave Conference 2018

2年に1度開催される、Global Wave Conference

今年3月、カルフォルニア州サンタクルーズで開催された。SFJからはCEOの中川 淳と事務局の岡田 千枝、アンバサダー 高貫 祐麻、オブザーバーとして、サーフレジェンド代表の加藤 道夫の計4名が参加した。

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開催5回目のコンファレンス。クリス・マロイ、ショーン・トムソン、グレッグ・ロング、著名サーファーやプロサーファーも含めたサーファー達の集まりには、世界の環境保全団体、弁護士、研究機関の専門家、NGO、コミュニティー、学生など、世界14カ国から300人が集まり、それぞれの国(米国、英国、メキシコ、チリ等)の海の危機対策を共有した3日間。コンファレンス共同主催のSurfrider Foundation / Save the Waves Coalition代表からはサーファーの90が海の環境保全が気になるというアンケート結果が紹介され、「海を愛する仲間がそれぞれ持つ専門知識を高め、共有することで更に多くの分野の人達の言語を学び、伝達をしなくてはいけない」というメッセージが伝えられた。

政治、法律、経済界を相手にするには自分達が相手の理解できる言語で話さなくては進まない、という。

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3日間に渡るスケジュールに組み込まれたテーマは(1)陸と海とのつながり(2)海洋保全区域(Marine Prortected Area)とサーフィン(3)気象変動とイノベーション。

セミナー形式で行われた個別セッションのトピックは以下が含まれた。

沿岸地域が生む経済効果、内包的価値、海の存続、カリフォルニア州の例を取った国立海洋保護区域、世界各国33都市における決議、政治を変えることから政策を変える、変化を促す為には何ができるのか?実動に繋がるステップ、サーファーが中心となり社会に刺激を生むこと。

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 <沿岸地域が生む経済効果と内包的価値>

北米における今のキーワードはMarine Protected Area (MPA)。陸の国立公園や環境保全区域に対して、海も「守る手段」を持つべきとの発想。これはコミュニティーレベル、国レベルで必要な手立て。MPAが地域経済を生むということも実証しながら使わなくてはならない、地域を動かす大きな要因。北米では、現在あるMPA10年で倍にする目標を立てたという。それぞれのローカルが立ち上がれば難しい数字ではない。コニュニケーション力、裏付けるデータ、そして実働を図るコニュニティーが必要となる。

 <海を法的に守るということ・サーファーがコミュニティーを率いるということ>

法的枠組みの話は、波に人権ならぬ波権設定に成功したペルーの実例を共有。サーファーが声を揃えていなかった中、Surfrider Foundationの存在がペルーのサーファーをつなげた。1992年、サーファーでもない海軍の一員の発言から、保護対象の波の登記に成功。その後2013年には波の保護の法律化に成功しているという。「波」を法的観点から捉える方法から「波」の「法人化」を実現した例。企業を守ることと同じように、波を法的に守る手段を世界に見せた例である。例えば、海岸沿いのリゾート開発企画が波を崩してしまうケースがある。着工阻止の為にリゾート開発企画の一帯の土地を買わなくても、保護対象の波が近くにあった場合、リゾート開発企画者は、開発が波の形状に少しでも変化をきたさないことを証明しなくてはいけない。開発企業に対しては確実にハードルの高い問題ではあるが、波は守られる。海軍の一員の一声が、コミュニティーを巻き込み、ローカルレベルでの組織の確立につながった。2013年以降、2年半で24の波を追加登記、15の団体や地域組織とアライアンスを組み、100の波を登記することを目指している。多少の差はあったとしても、法的アプローチは世界共通。波という共通価値を持つサーファーは他国の知見を活用し、世界の波を守ることができる。近隣国、チリでも同様に動くという。

 <サーファーが中心となり、社会に刺激を生むこと>

教育についての話があった。ハワイで年間12,000人の子供に海教育をしているという Kahi Pacarro (Sustainable Coastlines Hawaii)Eco Board Adaptionに携わっている。プロサーファーにEco Boardを使いってもらい、その遜色無いパフォーマンスを宣伝している。ボードの素材、使用するペイント等を1本のボードにつき25%、環境フレンドリーにしたボードがEco Boardと定義される。今後は環境フレンドリー度合いの25%を30%に引き上げ、それを大域に広める予定。

 <変化を促す為には何ができるのか。実動に繋がるステップ>

英国にあるサステイナブルサーフショップのオーナーの話、気象変動、Sea treesの話、海洋生物学、海岸工学含めた話など、幅広い専門家の話は常に次に取れるアクションを具体的に伝えていた。

 Dr.M.Sanjayan, CEO, Conservation International

地球環境科学者でもあるConservation InternationalDr.Sanjayanが質疑応答コーナーで「二酸化炭素排出の削減だけを考えた場合、地球に一番効率的なのは?」との質問に「マングローブの1本を植えること」と即答。それぞれの活動が意味ある行動としたなかで、地球の0.7の面積しか占めないマングローブは森林の10倍もの炭素排出削減量、吸収量を持つと説明。

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確実なアクションを迷いなく伝えることができる大切さ。知識は仲間で共有し、教え合えばいい。時間がない今、世界でサーファーが知識と経験を共有し、団結して行動することが大きな力となる。

レポート:岡田千枝

米国サイトへリンク
https://www.savethewaves.org/globalwaveconference/

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以下、エイ出版社NALUコラムより抜粋

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いまアメリカで重要なキーワードとされているのはMPA「Marine Protected Area (海洋保全区域)」だそうで、これは陸上の国立公園や保全区域のように法的に守られる仕組みを海にも与えるべきというものです。これを日本でも成立させるには地域レベル、国レベルでの働きかけが必須となると思います。そのためにはMPAがそれぞれの地域で経済効果を生むということも実証しながら行っていかない限り行政を動かすことはできないでしょう。

海の環境を守るためには我々個人の意識変革と行動はもちろんですが、行政にも動いてもらう必要があります。そのためには相手が理解できる言葉を用いる必要があり、感情論や希望的展望ではなくロジカルに双方のメリットを打ち出し提案することが重要になりそうです。

カンファレンスの発表の中には政府と対立して成果を得るというやり方をしている団体もありましたが、それを聞いていて「このやり方は日本では機能しないだろうな」と思うこともありました。日本という国は独特で、アメリカ的な反政府運動やデモ、攻撃的な批判よりも、お互いが歩み寄って対話の場を設けるほうが結果に繋がるのではないかとも思うようになりました。

2020年東京オリンピックの追加種目にサーフィンが選ばれたことで、国民のみならず行政からも確実にサーフィンに対する注目が高まっていると思います。僕の身近な一宮町の町議会議員にコアなサーファーである鵜澤清永さんがいて尽力してくださっていたり、その他の地域の市議会議員、県議会議員、国会議員にもサーファーとして海を愛する方々がいる時代となっています。

今こそSFJが市民の意見をまとめてサーファー議員さんと共に行政に掛け合うことができる団体となるため、賛同していただける方のSurfrider Foundation Japanへのメンバー登録をお願いいたします。

執筆:SFJアンバサダー 高貫 祐麻

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