第一回 海を愛する政治家フォーラム @InterStyle横浜
主催 一般社団法人 サーフライダーファウンデーションジャパン
2017年2月15日(水)インタースタイル横浜会場内、パシフィコ横浜プレゼンテーションルームにて「第一回海を愛する政治家フォーラム」が開催された。2名の国会議員と12名の地方議員、計14名のサーファー議員が横浜に集い、SFJの目的である「日本の海岸環境の保護」について意見を交わした。
環境省登録環境カウンセラー、社団法人NB研究所専務理事、桜門技術士会会長 成島誠一氏
第一部の基調講演は、鎌倉七里ガ浜で生まれ育った生粋のサーファーで、日本を代表する土木技術者である成島誠一氏。「福島第一原発の汚染水処理及び放射性廃棄処理」について発災から現在に至るまで、そして今後の対応についての実際に現場で働くサーファーである成島氏の話を直接聞く機会を頂いた。
国難を超える使命感と俯瞰的イノベーションで臨む。つまり原発事故は未経験の災害であり、実績のない状況下での挑戦である。具体的には、放射性廃棄物との隔離層にベントナイトという天然の粘土鉱物を使用することが現在における最善策であることを、実物のベントナイトを用いた実験をしながらわかりやすく説明して頂いた。
福島第一原発の廃炉処理は40年かかる作業と予想されている。今後、国内の50数基の原発全ての廃炉に向かって未来の人材育成プログラムを開始、早稲田大学とともに廃炉地盤工学という専門学を作り志ある若者を育成してくという。最後に、土木学会の理念である「現代の世代は未来の世代の生存を保証する責務がある」そして、自然と人間を共生させる環境の創造と保全は土木技術者にとって光栄ある使命である。という言葉で講演を締めくくった。
馬淵 澄夫 衆議院議員。元国土交通大臣、東日本大震災時には総理補佐官として災害収束にあたる。横浜国大出身で大学時代は大磯を中心に湘南一帯で波乗りに明け暮れ、現在もホームポイントである大磯に住まいがあり、早朝海に入り波に乗り国会へ向かうライフスタイルを継続している。東京オリンピックサーフィン競技会場に選ばれた千葉県一宮町長は馬渕議員の従兄弟にあたる。テトラポッド、消波ブロック、離岸堤による波の変化を非常に残念に思っており、サーファーの声をまとまった数にして政治に届けることが、安全防災を確認しながらサーフポイントを残していくことにつながるとSFJの運営に対して力強いアドバイス頂いた。
中西 健治 参議院議。四十の手習いで始めたサーフィン、ロングボードを11本も買ってしまったというエピソードで会場の雰囲気を柔らげてくれた中西議員。色々な問題がある中でも、特に砂浜の減少については、いちサーファーとして皆さんと一緒に取り組みを始めたいと語って頂いた。
第二部は、地域行政への提言として「主要な海浜に消防ライフガードの設置を」「公共土木事業の未来について考えよう」二つの課題について意見を交わした。
神奈川県ライフセービング連盟顧問 加藤道夫氏。夏開催の2020東京五輪へ向けて、海外のように主要な海浜に公務員ライフガードを設置することにより安心安全かつ文化的な市民の海岸利用を促進するとともに、防災機能や地域活性化へもつなげていく。アメリカ、オーストラリアなど海外の事例を説明しながら、ボランティアのライフセイバーではなく、公務員としての消防ライフガードの設置を提言した。
2015年JPSAグランドチャンピオン 仲村 拓久未プロ。地元である三重県伊勢志摩、国府の浜のテトラ撤去について提言した。国府の浜に置かれた不自然なテトラポットは、70年代当時、地元住民にとって全くありがたくない存在だったサーファー達を追い出す目的で消波ブロックとして入れたという経緯が記録に残っている。とても不名誉な過去ではあるが、現在では都市部から来訪するサーファーは地域経済にも貢献し、地元では仲村プロに続く子供達も現れ、サーフィンが地域社会にとって欠かせなものとなった。であれば、波を良くする為にテトラポットを撤去することができないだろうか?国府の浜の今後の動きに注目したい。
また、SFJ代表中川は、Patagonia社の環境部門から提出して頂いた資料をもとに、熊本県の球磨川の荒瀬ダム撤去工事の事例を参考にして、造ることが前提にある公共コンクリート土木事業を、自然再生型へ、不要になったテトラや堤防なども含めて、撤去していくことに対して産業化することができないだろうかと提議した。我が国の自然環境を守る為には、未来へ向けて「不要なものは自然へ戻す」「失敗例を認める」「決めたことを変えられる」そんな行政のあり方を模索していくべきだろう。
鵜澤 清永 千葉県一宮町議会議員。30年以上サーフィンをしながら地元一宮の海を見つめ続けた。6年前に立候補、サーファーとしての視点で砂浜の侵食、テトラ問題などに取り組む。行政は一度手がけたものを簡単には失敗と認めない体質がある。そんな空気が漂う中、誰よりも海岸を見つめ続けたサーファーとしての意見を貫いた。激しく侵食が進む一宮海岸、狭いスパンで防波堤を10本入れたことは明らかな失敗例であり、静岡県磐田市のサンドバイパス事業なども参考に新たな方法を模索し養浜を成功させたいと語って頂いた。
菊池 伸英 愛媛県議会議員。自然環境に恵まれた四国からの参加、地域の自然環境を守ることの大切さを語って頂いた。
岡本 詠 高知県土佐清水市議会議員。離岸流による事故が多発する土佐清水市でも、公務員としての消防ライフガードの設置を提案したいと語って頂いた。隣接する宿毛市の市長もサーファーである。
柾木 太郎 茅ヶ崎市議会議員。茅ヶ崎市の養浜事業の取り組みについて説明と、常に視点を変えて、行政と対立せずに共生することの大切さを伝えて頂いた。そして、サーファーと行政の関わり方について、茅ヶ崎市の豊富な成功例を語って頂いた。
土佐洋子 神奈川県葉山町議会議員。プロウィンドサーファーで世界チャンピオンの経歴を持つ。海のエキスパートとして、専門的な見地で意見を頂いた。
数田 俊樹 平塚市議会議員。理に適った仕組みとして平塚市においても、年中通年で公務員としての消防ライフガードの設置をしっかりと検討したいと語って頂いた。
高野 毅 逗子市議会議員。逗子海岸通年の安全安心を担保するためにも、消防ライフガードの設置の提言については、逗子市議会に持ち帰り提案をすると約束して頂いた。
伊藤 毅志 東京都渋谷区議会議員。都心部の議員だが波乗りのキャリアが豊富で、辻堂の松下政経塾の目の前の波が良かったので、入塾の試験を遅刻してしまい不合格となったというサーファーらしいエピソードを披露して、会場の雰囲気を和ませて頂いた。
山口 政哉 藤沢市議会議員。消防ライフガードの設置の提言については、議会に持ち帰り提案をすると約束して頂いた。
有賀 正義 藤沢市議会議員。消防ライフガードの設置の提言については、議会に持ち帰り提案をすると約束して頂いた。
消防ライフカードの設置の提言については、多くの議員が前向きな反応を示した。もし、ライフガードが設置されれば、季節に関係なく通年で迅速な水難事故の救助活動が実施できる。また、水質調査活動やゴミ問題などの取り組みにより、海岸環境を美しく保つための機能にも期待が出来るので、ぜひ実現してほしい。公務員であることから、豪州のように子供達が憧れる職業として社会に定着させることが出来れば、未来へ向けてとても素晴らしいことになる思う。
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以下に紹介する三名が、政党の枠を超えて海を愛する心でつながり力を合わせ「海を愛する政治家フォーラム」がスタートした。
近藤 大輔 神奈川県議会議員(民進党推薦)、地元である逗子葉山地区では環境保護派で知られる。常に地域市民との対話を大切に、市民目線で親しみを持って語り合うことができる数少ない政治家の一人。心から海と自然を愛する政治家である。
佐賀 和樹 藤沢市議会議員(自民党)。彼の父は日本サーフィン史の草分、鵠沼佐賀兄弟の一人である。つまり、幼少期からサーフィンカルチャーの中枢で育ったのだ。1990年代半ばに、地元鵠沼の大六ポイントが開発行為による埋め立ての危機に晒された。このことに地元の若いサーファーを集めて反発、署名活動やデモ行進など派手な反対運動を繰り広げた。その様子がTVニュースや週刊誌など多方面で取り上げられるほどの大きな話題になった。この反対運動が政治の実情を知ることがきっかけとなり、政治家を志した。つまり彼こそが、海を守るサーファー議員の原点なのである。以後、5期連続当選を果たし現在に至る。
塩坂 源一郎 フォーラム座長。元JPSA公認プロ・ロングボーダー、老舗サーフショップの経営や日本プロサーフィング連盟の運営経験など、サーフィンに対する見識が深く、日本各地のサーファー達との交友関係も幅広い。前神奈川県議会議員(当時みんなの党)でもあり、多岐にわたる経験を生かして、海岸環境の保護に情熱を傾け、SFJの活動を支えてくれている。
漁業や観光などの産業を見ても、神奈川県は国内で最も海からの恩恵により成り立っている地域だ。神奈川から全国へ呼びかけ、国内の海を愛する政治家がつながり、日本の海岸環境の保護を実現化してほしい。
今回のフォーラムの締めくくりとして、「みんなの生活を豊かにする自然な海をそのままに」を今後一年間の活動理念に掲げた。
超党派で集う、海を愛する政治家たちの今後の活動に期待したい。
第一回海を愛する政治家フォーラムの様子は、以下のサイトで動画配信されています。
撮影ボランティア 市川紀元
協力 株式会社インタースタイル
株式会社サイバーエージェント
株式会社デジサーフ
第一回 海を愛する政治家フォーラムは、独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催しました。